下水エネルギーとは?

2015年6月6日土曜日

下水エネルギーとは?

いま注目されつつある下水エネルギーとは?




下水道処理関連で発生するエネルギーや資源について


下水処理過程で発生するメタンガスでのバイオマス発電

下水道を処理する過程でメタンガスが発生する。

現在はそのまま廃棄されているが、これが周辺住民などへの環境被害となる可能性がある。これを資源として燃焼させ発電に再利用するというもの。

メリットとして、これらの環境汚染をなくし、かつ下水処理施設のコスト低減にもつながる。

また住民の日常生活で発生するため、太陽光などのように環境に左右されず安定的なエネルギーが見込めるというメリットがある。しかも下水処理は1か所に集めるインフラ設備が整備済であるため、投資はメタンガスを取り出す仕組みだけで済むというメリットも大きい。

栃木県が開始した施設では、三台の施設で1時間あたり300kWhの発電量が見込めるという。これはおよそ700世帯分のエネルギー量という。

なおバイオマス発電に相当するため、国の定めた買取価格は40.95円と少し高めに設定されている。(風力で23.1円、水力は25.2円、地熱で27.3円)このため、栃木県の場合では、建設に掛った費用を差し引いても年間4800万円の利益が発生する。現在では4ヶ所に増えており、今後20年間で20億円の収益を見込む。

発電量としては微々たるものだが、こういう設備を全国の自治体で稼働させることで大きなエネルギー消費量の削減につながることが期待できる。(現在は全国で30ヶ所)



「水素」を取り出す

下水処理で発生するガスから水素を取り出し、水素エネルギーとして活用する。都市ガスと同等のエネルギーを持っているため、都市ガスにも再利用できる。

これを今話題の「水素自動車」の燃料として利用するという仕組みになる。


下水配管からの熱エネルギー活用

下水道配管は、真冬でもおよそ12度を保っており、外気温に比べるとかなりの温度差が発生している。

この熱を特殊な処理で取り出し、地域施設の空調に活かす技術開発が実用段階に入っている。

下水配管は日本全体でおよそ46万kmもの長さを持っており、ここから熱資源を取り出すことができれば、莫大なエネルギーコスト削減につながることができる。


汚泥からの資源化

下水処理過程で発生する汚泥に対して炭化処理を行い、石炭として再利用する。これは地球温暖化には寄与しない(CO2削減につながる)。

また汚泥を特殊処理することで、植物の肥料に利用可能である。


売電コスト負担問題

なお売電コストが他の発電よりも高いということは、それは住民負担に跳ね返るということでもある。

ただし、独立したエネルギー資源を得ることのメリットは非常に大きく、それは国の政策の自由度にも結びついてくることになる。現在国会でおおきな議題となっている「集団的自衛権」でも、ペルシア湾での掃海作業などが話題に登る。それは石油エネルギーを運ぶタンカーがここを通るからである。さらに、中国が占拠しつつある南沙諸島周辺もタンカーの通り道であり、今後我が国のエネルギー政策におおきな影響を与える可能性がある。

また、発電コストが安いということで推進されてきた原子力発電は、いったん事故を起こすととんでもない巨額の費用が発生し、それが国民全員で負担するという結果になることを、すでに私達は我が身をもって学んだ。

また事故を起こさなくとも、原子力発電所設備は未来永劫使えるものではなく、建設から40年経てば廃炉処理が必要となる。この廃炉処理費用についても、国民負担となっていくのである。

その他の発電所と異なり、原子力発電所では廃炉時に発生する高レベル核ゴミの処分方法はおろか、一時的に置いておく貯蔵施設の候補地すら決まっていないという現実がある。

また現在はほぼ火力発電に頼っている状態だが、それもほぼすべての資源を他国に頼る状態であり、そのために足元を見られて高価な水素ガスを購入させられている現実がある。またシェールガスのように他国の政策次第でエネルギー調達に困難を来す可能性も非常に高いということも忘れてはいけない。現在安いからといって、未来永劫安いわけではないのだ。

独立したエネルギー資源を持つということは、限りない可能性を持つことにつながるということを理解しなければならない。

単純な発電コストだけで話を進めると、こうした大きな落とし穴が待っていることを意識する必要がある。建設から廃炉までを含めたトータルの発電コストという概念で話を進めるべきだろう。



0 コメント :

コメントを投稿